素材を変えるだけでは、循環型ビジネスにならない
2026年6月24日、25日、ベルギー・ブリュッセルで開催された「Future Fabrics Expo 2026」と「Textiles Recycling Expo 2026」に参加しました。
Future Fabrics Expoは、環境や社会に配慮して生産された生地や素材を集めた展示会です。一方、Textiles Recycling Expoでは、衣類や生地、繊維、靴、不織布などの回収、選別、再資源化に関する技術や事業が紹介されました。
今回は、この二つの展示会が同じ会場で開催されました。素材をつくる側と、使用後の製品を回収・再資源化する側を一つの場所で見ることができ、テキスタイル産業全体を考えるうえで非常に意味のある構成でした。Textiles Recycling Expoには5,607人が来場し、欧州内外の企業や業界関係者が集まりました。

ブリュッセルで行われたサーキュラーテキスタイル展示会
「環境に良い素材」だけでは事業は続かない
会場には、再生素材、植物由来素材、製造工程で発生する端材を活用した素材など、多くの選択肢が並んでいました。
ただし、今回強く感じたのは、素材を環境負荷の低いものに置き換えるだけでは、循環型ビジネスは完成しないということです。
どれほど優れた素材であっても、
- 安定して調達できるのか
- 必要な品質と数量を確保できるのか
- 誰が回収し、どこで選別するのか
- 再生した素材を誰が購入するのか
- 従来品と比較して事業として成り立つのか
という仕組みがなければ、広く普及することはできません。
Textiles Recycling Expoでも、素材やリサイクル技術だけでなく、回収物流、選別、製造、政策、サプライチェーン全体の連携が主要なテーマとなっていました。欧州でも現在の中心課題は、実証実験を増やすことより、実際に運用できる仕組みへ移行し、事業として規模を拡大することにあります。


会場ではサーキュラーテキスタイル関係者の登壇に多く聴取が集まっていました
展示会場の外にある「本当の情報」
今回、展示会だけでなく、関係者が集まる交流会やボウリング大会にも参加しました。
会場のブースでは、各社の技術や製品について説明を聞くことができます。しかし、少し離れた場所で直接話すことで、「実際には何に困っているのか」「どこまで事業化できているのか」「どのような企業を探しているのか」といった、展示資料だけでは分からない話を聞くことができます。
循環型ビジネスは、一社だけでは成立しません。
素材を持つ企業、製造する企業、商品を販売する企業、使用済み製品を回収する企業、選別・再生する企業、そしてデータや物流を支える企業がつながる必要があります。
だからこそ、正式な商談だけでなく、こうした交流の場で信頼関係をつくることも、欧州で事業を進めるうえで非常に重要だとあらためて感じました。

ボーリングセンターでサーキュラーテキスタイル交流会の様子
日本企業に必要なのは「素材探し」から「事業設計」への転換
日本企業が欧州の展示会を訪れると、新しい素材や技術を探すことが目的になりがちです。
もちろん、素材や技術を知ることは重要です。しかし、これから必要なのは、「何か良い素材はないか」という探し方から、「自社はどのような循環をつくるのか」という考え方への転換です。
例えば、自社の製造工程で発生する端材や、販売後に回収できる製品を起点として、
- 何を回収するのか
- 誰と連携するのか
- どのような商品や材料に再設計するのか
- 顧客にどのような価値を提供するのか
- どこで収益を生み出すのか
を具体的に考える必要があります。
大規模な設備投資から始める必要はありません。
特定の商品、地域、取引先に対象を絞り、小さな循環の仕組みを実際に動かす。そこで得られた品質、コスト、回収率、顧客の反応などのデータを蓄積し、次の事業へ広げていくことが現実的です。
日本には、まだ十分に活用されていない価値がある
日本には、優れた製造技術だけでなく、地域の素材、職人技、長く使う文化、修理や手入れの知恵があります。
これらは、欧州が目指している循環型経済との親和性が高いものです。
一方で、その価値が十分に整理されず、国内外の市場に正しく伝わっていないケースも少なくありません。
必要なのは、欧州の素材や制度をそのまま日本へ持ち込むことではありません。
日本が本来持っている素材、技術、文化を見直し、現代の市場に合う商品やサービスとして再設計すること。そして、製品が販売された後も、修理、再販売、回収、再資源化へつながる関係をつくることです。
欧州との接点を、情報収集で終わらせない
今回のブリュッセル訪問を通じて、欧州のテキスタイル産業は、理念を語る段階から、具体的な供給網や収益性を構築する段階へ進んでいると感じました。
日本企業にとっても、欧州は単なる輸出先ではありません。
共同開発の相手、市場での評価を得る場所、循環の仕組みを一緒につくるパートナーを探す場所として捉えることができます。
展示会で新しい素材を見るだけでなく、その素材を使って誰と何をつくり、どのように回収し、どこで事業として成立させるのか。
そこまで考えることが、循環型ビジネスを構築する第一歩です。
YEJapanでは、欧州の政策や市場動向を紹介するだけでなく、日本企業が持つ技術や地域資源を起点に、欧州企業との連携、事業設計、現地でのパートナー探索を支援しています。


