【オランダ発】スタートアップ―消費者が循環の主役になる日
「Droppie」に学ぶ参加型リサイクルの未来
■ イントロダクション:
先日、オランダ・アムステルダムで開催された CRCLPARK イベント にて、
リサイクル・スタートアップ Droppie(ドロッピー) の創業者 Stef Traa(ステフ・トラー)氏と直接お話する機会がありました。
彼の言葉の中で最も印象的だったのは、
「リサイクルを“退屈な分別作業”から、“楽しい社会参加”に変えたい」という一言です。
Droppie の取り組みは、まさにその理念を実装したものでした。
■ Droppieとは何か:テクノロジーと行動変容をつなぐリサイクルプラットフォーム
Droppie は、消費者が使わなくなった衣類・小型家電・ペットボトル・テキスタイルなどを
街中の回収拠点に持ち込み、アプリを通じて報酬(現金・寄付)を受け取る仕組みを提供するスタートアップです。
各拠点には QR コードと連動した「スマート回収マシン」が設置されており、
持ち込まれたアイテムは即座にデータ化・分類され、
Droppie のクラウドシステムを通じてリサイクル事業者へとつながります。

住んでいるハーグにも4店舗あり(2025年10月現在)、我が家でもこのアプリを使っています。
この仕組みの魅力は、「行動を促すインセンティブ設計」にあります。
ユーザーは持ち込むたびに報酬を得るだけでなく、
その報酬を NGO への寄付にも回すことができ、
“捨てる行為”が“社会貢献”へと変換されるよう設計されています。
■ オランダが示す「報酬付きリサイクル」という行動デザイン
Droppie の回収拠点には、1日あたり400〜500人もの市民が訪れるといいます。
回収品目はペットボトルに限らず、テキスタイルや電気製品など多岐にわたります。
まるで「町のエコ・ステーション」がデジタル化したような光景です。

子供たちも大きな袋にたくさんのペットボトルやアルミ缶、瓶などを持ってきています
リサイクル行動における最大の課題は、「やっても報われない」という心理的ギャップ。
Droppie はここをテクノロジーで解消しました。
アプリを介して即時に報酬を受け取れる体験は、
単なる“ごみ出し”を“社会参加の入り口”に変えています。
■ 日本にとってのインサイト:設計から回収までをつなぐ「循環の架け橋」
日本の製造業は、品質管理やトレーサビリティの精度では世界屈指ですが、
多くのトレーサビリティシステムは「製造後」の管理に留まっています。
一方で、Droppie の仕組みは「消費後」の世界から循環を再起動するモデルです。
製品を“設計段階から捨てない”ように作ることと、
“使い終えた後に価値を取り戻す”ことは、同じ循環の前後をつなぐ行為です。

この日も店舗の外にも行列が出来るほど、この場所には人が集まって来ていました。
つまり、Droppie は消費者行動から循環を呼び戻す存在。
■ 今後への示唆:消費者参加型の循環設計へ
日本でも、今後「デジタル製品パスポート(DPP)」や「拡大生産者責任(EPR)」の動きが本格化します。
その中で、Droppie のような仕組みは単なる回収インフラではなく、
消費者を“循環の担い手”に変えるUXデザインのヒントになるでしょう。
製造業が素材のトレーサビリティを設計するなら、
市民はその素材の“次の命”を選ぶ存在になる。
Stef Traa 氏が語ったように、
「人々がリサイクルを誇りに思える社会」こそ、
真の循環経済への第一歩なのかもしれません。
■ まとめ
Droppie が教えてくれるのは、「技術」よりも「体験」の力です。
リサイクルを“義務”から“共感と行動”へと変えるデザイン。
そこに、循環経済のもうひとつの鍵があると感じます。
著書プロフィール
山本 英治(YEJapan, CEO/ Circular E, Founder)
製造業に深い造詣を持ち、現在は欧州・日本の製造業や自治体におけるサーキュラーエコノミー戦略を実行するビジネスモデルデザイナー。
オランダと東京を拠点にESPR、DPP、ISO 59000シリーズなど欧州の規制適用や9R施策導入など仕組み化や実装支援を行う。
📘 スタートアップ × サーキュラーエコノミー シリーズ


