欧州サステナビリティ規制の最前線から学ぶ
―ReLondon Week 参加レポート Vol.1

Navigating European Sustainability Regulations: 欧州の企業が直面する“実装のリアル”


イベント CEweek2025とは

2025年10月、ロンドンで開催された「ReLondon Week 2025」。
このイベントは、循環型都市を目指すロンドン市が主導し、行政、企業、大学、スタートアップが集う、サーキュラーエコノミー実践の国際的な交流の場です。

主催するReLondon(リロンドン)は、ロンドン市とロンドン廃棄物局によって設立された公的組織で、「Waste Nothing, Make Things Last(無駄をなくし、ものの命を延ばす)」をミッションに掲げています。市民・企業・行政をつなぎながら、都市全体での循環経済の実現を進めています。

今年のテーマは「From Compliance to Opportunity(規制対応から価値創造へ)」。
EUで相次いで施行されるサステナビリティ関連法に対し、どう適応し、どう新しい価値を生み出すかが議論の中心となりました。

その中で特に注目を集めたのが、今回紹介するワークショップ「Navigating European Sustainability Regulations: a practical masterclass for businesses」です。
欧州の現場で何が起きているのか、そしてそれが日本にどんな示唆を与えるのか――。現地で感じた空気をレポートします。


欧州サステナビリティ規制の現状

登壇したのは、デジタルトレーサビリティやサプライチェーン可視化を専門とするFinvert社とSteamboo社の代表。
彼らが語ったのは、法令の解説ではなく「どう現場で実装するか」という現実的なテーマでした。

いまEUでは、複数の環境・循環関連法が連動しながら動いています。

  • EUDR(森林破壊防止規則)
  • ESPR / DPP(持続可能な製品規則・デジタル製品パスポート)
  • PPWR(包装・包装廃棄物規則)
  • RED改訂(再生可能エネルギー指令)

これらは個別の法律ではありますが、根底にある目的は同じです。
それは「サプライチェーン全体で、環境・人権・循環性を可視化し、信頼できる市場をつくる」こと。

講師の一人はこう話していました。
「いまのヨーロッパでは、規制対応は単なる義務ではなく、ビジネス戦略の一部になっています。
サステナビリティをコストではなく、競争優位の源泉に変えることが重要です。」


現場からの声に見える“リアル”

ワークショップの印象的な場面は、参加者とのQ&Aでした。

「EUDRの施行が延期されたと聞きますが、準備を止めてもいいのでしょうか?」
「中小企業にはハードルが高すぎるのでは?」
「サプライヤーからデータをどう集めればいいですか?」

こうした率直な質問に対して、登壇者は一様に答えました。
「待っていても楽にはなりません。要件が軽くなっても、目的は変わらないからです。
できる範囲から見える化を始めること。それが将来のコストを最も減らします。」

欧州でも多くの企業が、すべてを一度に整えるのではなく、まず「優先すべき1ライン」や「1つのサプライチェーン」から始めているそうです。
EUDR対応であれば、原料の区画情報を特定し、衛星データで森林変化を確認する仕組みを試行する。
ESPRであれば、DPP(デジタル製品パスポート)に必要な項目を試験的に収集してみる。
小さな成功体験を積みながら、全社的な仕組みに広げていく流れが主流になっています。


規制対応を“価値創造”へ変える動き

ワークショップでは、実際に成果を上げている企業の事例も紹介されました。
「森林破壊のない調達」を証明できるコーヒー豆を販売する企業では、その透明性がプレミアム価格の要因になっているそうです。

つまり、サステナビリティデータを“証明書”として活用できれば、
製品やブランドの信頼性そのものが価値になるということです。

ヨーロッパでは、規制を「縛り」ではなく、「差別化の基盤」として捉える企業が増えています。
再生材の使用や再エネ導入、修理・再販の仕組みづくりなど、
“見える化”がブランド力の一部になる時代がすぐそこまで来ています。


日本企業への示唆

日本では、これらの欧州規制がまだ遠い話のように聞こえるかもしれません。
しかし、実際にはグローバル取引を行う企業にとって、EUDRやESPRはすぐに波及していく可能性があります。

まずは、自社の製品や原材料のどこにリスクや機会があるのかを見える化すること。
そして、サプライヤーと共有すべきデータ項目を整理し、小さな実証を重ねることが第一歩になります。

欧州企業が口をそろえて言っていたのは、「完璧を目指さない」こと。
段階的に進める柔軟さこそ、持続可能な実装の鍵だと感じました。


まとめ:規制を恐れず、未来の競争力に変える

ReLondonのワークショップを通じて見えたのは、
欧州では「規制=制限」ではなく、「文化を変えるチャンス」と捉えられているということでした。

法令順守は、企業の信頼を生み出すプロセスの一部。
データと透明性が新しい市場価値をつくる時代に、
企業が問われるのは「どれだけ早く、どこから動けるか」です。

みなさんの組織では、どこから始められそうでしょうか。
EUDRもESPRも、PPWRも、すべては「持続可能な企業」へ進化するための通過点です。

著書プロフィール

山本 英治(YEJapan, CEO/ Circular E, Founder)
製造業に深い造詣を持ち、現在は欧州・日本の製造業や自治体におけるサーキュラーエコノミー戦略を実行するビジネスモデルデザイナー。
オランダと東京を拠点にESPR、DPP、ISO 59000シリーズなど欧州の規制適用や9R施策導入など仕組み化や実装支援を行う。

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