第2回:EU循環経済行動計画(CEAP)を読み解く ― 規制群の出発点
はじめに
2020年、欧州委員会は 「循環経済行動計画(Circular Economy Action Plan:CEAP)」 を発表しました。
これは欧州グリーンディールを実現するための主要戦略のひとつであり、資源の効率利用・廃棄物削減・産業競争力強化を同時に進める「設計図」として機能しています。
本記事では、CEAPの構造と重点分野を整理し、日本の製造業が理解しておくべきポイントを解説します。
CEAPの位置づけ
特徴:重点分野を明示し、横断的テーマも定義
策定年:2020年(グリーンディールと同時期)
目的:資源効率の向上・廃棄物削減・新しいビジネスモデルの推進
性格:アクションプラン(青写真)。個別規制の母体となる。
CEAPの重点分野
CEAPでは、とくに環境負荷が大きく、かつ市場規模も大きい5つの分野を「重点分野」として指定しています。
繊維・ファッション
- 「大量廃棄」問題に対応するための新ルール
- 耐久性・リユース・リサイクル可能性を重視した設計
- いわゆる「ファストファッション」への規制強化の方向性
電子機器・ICT
- 修理のしやすさ(Right to Repair)を制度化
- 部品・製品のデータ可視化(後のDPP導入の土台)
- 長寿命化と再利用市場の拡大を目指す
包装・包装材
- 包装廃棄物を削減するための再利用義務化
- リサイクル材の利用率を段階的に引き上げ
- 食品・非食品分野で異なる規制設計が議論中
建築・建設
- 解体資材の再利用・再資源化
- 建材のトレーサビリティ強化
- ライフサイクルアセスメント(LCA)の義務化検討
バッテリー・自動車
- バッテリー規則の基盤
- サプライチェーン透明化・責任ある調達
- リサイクル含有率の義務付け
CEAPの横断テーマ
CEAPは個別分野だけでなく、共通の横断テーマを提示しています。
- 持続可能な製品政策(ESPRへ発展)
- 消費者情報の透明性(グリーンウォッシュ防止、エコラベル整備)
- 循環ビジネスモデル(シェアリング、サービス化、モジュール設計)
- 資源効率データの活用(DPP・EPR・トレーサビリティに発展)
CEAPから生まれた主な規制
CEAPは単なる計画ではなく、その後のEU規制群の母体となりました。
| 分野 | 派生した主な規制 |
|---|---|
| 製品全般 | ESPR(持続可能な製品規則) |
| 繊維 | 繊維廃棄物規制、EPR導入 |
| 電子機器 | DPP(デジタルプロダクトパスポート)、WEEE改正 |
| 包装 | PPWR(包装・包装廃棄物規則) |
| バッテリー | バッテリー規則 |
日本企業にとっての意味
- 規制群の“出発点”を理解することが重要
- 個別規制に対応するだけでは全体像を見失う危険
- CEAPを軸にすると、各規制の位置づけや方向性が整理できる
- これは単なる負担ではなく、設計段階からの競争力強化のチャンスにもなり得る
Comparison
CEAP と CEA の違い(要点整理)
| 項目 | CEAP(行動計画, 2020–) | CEA(循環経済法, 進行中) |
|---|---|---|
| 性格 | 青写真/アクションプラン。分野別の方向性と横断テーマを提示。 | 包括的な「法」。共通ルールと実施枠組みを法的に整備。 |
| 拘束力 | 個別規則(ESPR, PPWR 等)に委ねる。 | 加盟国に直接適用する拘束力(最低ラインの統一)。 |
| 狙い | 重点分野の特定/規制の設計思想を明示。 | 規制群の整合性・透明性を高め、実装を加速。 |
| 市民参加 | 各規則ごとの public consultation。 | consultation / call for evidence を制度として恒常化。 |
| 日本企業にとって | 個別規則を追う入口として必須(出発点)。 | “全体像のコンパス”として把握(規制横断での整合)。 |
まとめ
CEAPは、欧州循環経済政策の青写真として、ESPRやDPPといった規制群の母体となりました。
日本では個別規制ばかりが注目されがちですが、その背景にある 「CEAPの設計思想」 を理解することが、戦略的対応への第一歩になります。
次回は、このCEAPを継承しつつ新たに法的枠組みへと進もうとしている Circular Economy Act(CEA) を取り上げます。


