ASEANイベントレポート①:Asian Development Bank-Circular Economy Forum 2025 Vol.1

循環経済を“統合設計”で前に進める——環境・エネルギー・都市・農業の現場から

「つながりをデザインする」循環経済へ

環境・エネルギー・都市・農業から見えてきた新しい実装のかたち

アジア開発銀行(ADB)が主催したCircular Economy Forumのメインパネルでは、環境、エネルギー、都市開発、農業という異なる分野のリーダーたちが集まり、循環経済をどうすれば実際に動かせるのかを語り合いました。
印象的だったのは、誰もが「技術だけではなく、つながりのデザインが大切」と口をそろえたことです。

ここでは、その主な発言や事例をやさしくまとめてお伝えします。


1. はじめに ― 循環は“発想の転換”から

モデレーターを務めたADBの品質・イノベーション担当者は、冒頭で次のように語りました。

「循環経済は、廃棄物の処理の話ではありません。
生産から再資源化までを、はじめから“つながり”として設計することです。」

ナレッジマネジメントや人間中心設計の考え方を取り入れながら、部門を超えた協働とシステム全体での最適化が欠かせない——。この言葉が、パネル全体のトーンを決めていました。


2. 環境分野:アジア開発銀行 環境局長 渡辺陽子氏

「三重の地球危機」に向き合う

ヨーコさんは、気候変動・生物多様性の喪失・汚染という“三重の地球危機”に対して、ADBでは循環経済を環境戦略の中心に据えていると説明しました。
リサイクルだけでなく、ものの生まれ方・使い方・再び資源に戻る道筋までを考えた政策が必要だと話します。

プラスチック条約の行方

国際的には、プラスチック条約の合意が近づいており、各国がこれをもとに国内政策を整備する流れが始まっています。
その中でヨーコさんが特に強調したのは、「制度だけではなく、人の力」でした。

「政策は設計図にすぎません。
循環を動かすのは、現場で取り組む人々——自治体、若者、女性、そして地域のリーダーです。」


3. エネルギー分野:シンディ・シスネロス・ダンコ氏

島国の“太陽光×水資源”プロジェクト

シンディさんは、島しょ国で進めているプロジェクトを紹介しました。
土地が限られる中、浮体式太陽光パネルを導入し、伐採した植生を生態緩衝地帯に移植。パネルにたまった雨水を集め、洗浄や生活用に再利用する仕組みを整えたといいます。
「エネルギーと水の循環」を同時にデザインした、まさに統合型の試みです。

再エネの次の課題

一方で、太陽光パネルや風車のブレード、バッテリーなど、再エネ設備の廃棄問題もすでに見え始めています。
「再生可能エネルギーの未来は“リサイクルの設計”から始まる」とシンディさん。
域内でのリサイクル産業の育成、人材教育、安全基準の整備など、次の課題を丁寧に語っていました。


4. 都市と水分野:アジア開発銀行(ADB)水・都市開発担当シニアディレクター、斉藤 紀夫氏

“集めて捨てる”から“集めて回収する”へ

斉藤さんは、アジアの多くの都市で、まだ「リニア(直線型)」の廃棄物処理が中心になっている現状を指摘しました。
そこからの第一歩は、基礎インフラと制度の整備です。

食品ロスと下水の再利用

  • 世界で年間13億トンにもなる食品ロスを、堆肥化や嫌気性消化によってバイオガス発電につなげる。
  • 下水や再生水を、農業用水や都市の補給水として再利用する。
  • 固形廃棄物の処理を、単なる「収集・運搬」から「資源回収とエネルギー回収」へ転換する。

これらの取り組みを通して、「都市を一つの循環システムに変えていく」方向性が示されました。

基調講演後の参加者写真


5. 農業・天然資源分野:アジア開発銀行(ADB)農業・食料・自然・農村開発担当部長、上田 武 

食の循環と地域の力

農業・天然資源チームからは、フードシステム全体の再設計についての報告がありました。
食品ロスや農業残さを、バイオ燃料・バイオマス・肥料などに変換し、地域内で循環させる仕組みを整えています。
ポイントは、中小企業の参加と地域コミュニティの支え。

「技術だけでなく、生活と市場に結びつけて初めて循環は定着します。」

成果基準型の融資(RBL)を通じて、国の政策から地方のプロジェクトまでをひとつの枠組みでつなぐ試みも紹介されました。


6. 交わる視点:循環を支える共通テーマ:ミゲル・ベルムンド氏、モバー・フィリピン・サステナビリティ担当副社長

議論の中で、各分野に共通するキーワードがいくつも浮かび上がりました。

  • 統合設計:エネルギー、水、廃棄物、生態系、デジタルを一体で考える。
  • 人材とガバナンス:政策・金融・教育を結びつけ、現場で実装できる力を育てる。
  • 再エネ設備・電池のリサイクル:新たな廃棄物課題に備え、地域産業を育てる。
  • 信頼と透明性:グリーンウォッシュを防ぎ、企業や製品の「本当の循環性」を見える化する。

7. 日本へのヒント

このパネルから、日本の自治体や企業が学べるポイントも多くあります。

自治体

企業・製造業

  • 製品設計の段階から「分解・再利用・再資源化」を前提にする。
  • リサイクルや回収をビジネスモデルの一部として組み込む。

農業・食品

  • 食品ロスから生まれる堆肥やエネルギーを地域内で循環させる。
  • 中小企業と連携し、地産地消型の「サーキュラーフードシステム」を育てる。

8. おわりに ― 循環は「技術」より「つながり」から

このパネルの一番の学びは、どの分野の人も「技術よりも、仕組みと関係づくりが大事」と話していたことでした。
政策、金融、人材、そして地域の声——それらが交わるとき、循環経済は“理念”から“現実”へと動き出します。

「誰かの課題を、みんなの可能性に変えること。
それが、次の循環をつくる最初の一歩です。」

著書プロフィール

山本 英治(YEJapan, CEO/ Circular E, Founder)
製造業に深い造詣を持ち、現在は欧州・日本の製造業や自治体におけるサーキュラーエコノミー戦略を実行するビジネスモデルデザイナー。
オランダと東京を拠点にESPR、DPP、ISO 59000シリーズなど欧州の規制適用や9R施策導入など仕組み化や実装支援を行う。

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