Loop 2026で見えた、競争力・資源安全保障・制度実装の現在地
コペンハーゲンで開催されたThe Leading Nordic Business Forum (Loop 2026)に参加し、北欧におけるサーキュラーエコノミーの現在地をレポートします。
フォーラムで受けた印象は、欧州全体でサーキュラーエコノミーがもはや「環境に良い取り組み」としてだけでは語られていないということです。気候変動、生物多様性の喪失、資源制約、地政学リスク、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの不安定化。こうした複数の危機が重なるなかで、欧州ではサーキュラーエコノミーが競争力・産業政策・資源安全保障の文脈で議論されるようになっています。

ただ、現在までに欧州が「循環型社会を実現を成し遂げた地域」ではないという状況もうかがえました。
欧州環境庁の報告によれば、EUの循環材料使用率は2024年時点で12.2%にとどまり、2010年からの改善は限定的となります。EUは2030年までにこの数値を倍増させる目標を掲げていますが、現状の進捗では十分とは言えません。
欧州は今、制度・産業・消費・資金・データを総動員して、循環型経済をこれから本格的に実装しようとしている段階にあります。
コペンハーゲンで行われたLoop 2026で繰り返し問われていたのは、シンプルな問いでした。サーキュラーエコノミーを、どうすればビジネスにでき利益構造をつくれるのか。
リサイクル材はバージン材より高コストになることも多く、修理や再利用には手間もかかります。回収インフラが追いつかない地域もある。消費者も、「サステナブル」という理由だけで割高な商品を選ぶとは限りません。
それでも、欧州の議論が後退していないのは理由があります。短期的なコスト比較だけでは測れない要素が、経営判断の中に入り込んできているからです。資源価格の変動リスク、重要鉱物の供給不安、規制強化への対応コスト、ブランドへの信頼、将来の調達リスク。これらを総合的に見れば、サーキュラーエコノミーは環境対策ではなく、不確実な時代を生き抜くためのレジリエンス戦略になります。

今回のLoop 2026で特に強く感じたのは、議論の重心が「リサイクル率を上げる」という段階から、より上流へ移っていることです。
製品は最初から長く使えるよう設計されているか。修理できるか、分解できるか、素材情報を追跡できるか、使用後に価値を回収できるか。その価値を次の製品や事業に還元できるか。
これは製造業にとって、かなり大きな転換です。これまでの競争力は「高品質な製品を効率よく作り、売ること」にありました。しかしこれからは、売った後の製品をどう回収し、どう再利用し、どう素材として戻すかまでが競争力になります。
欧州ではバッテリー・包装・繊維・自動車など複数の分野でこうした制度設計が進んでいます。EUのバッテリー規則はその代表例で、製品のライフサイクル全体を対象にした規制として位置づけられています。
日本企業にとって重要なのは、こうした動きを「欧州の環境規制への対応」としてだけの目的で処理しないことだと思います。
これは欧州をはじめとした世界の次の市場ルールになっていく可能性が高いと考えられています。
どれだけ良い製品を作るかだけでなく、その製品が使われた後にどれだけ価値を残せるか。
そこに、次のグローバルな競争力の源泉があるように見えてきます。
YEJapanとしても、この視点をもとに日本企業が欧州市場や国際サプライチェーンの中で循環型ビジネスをどう構築できるか、引き続き考えていきたいと思います。

