日本のリサイクル産業はなぜ世界から評価されにくいのか

― 回収率の高さとサーキュラー経済の違い ―

高い回収率という強み

日本は「リサイクル大国」と言われてきました。
家電リサイクル法や容器包装リサイクル法のもとで制度は整備され、廃棄物の分別も社会に根付いています。焼却技術や中間処理技術は世界でも高水準であり、安定的な回収インフラを全国に構築している点は大きな強みです。

実際、多くの素材で高い回収率を実現しており、廃棄物管理という観点では、日本は非常に成熟した国と言えるでしょう。

しかし近年、欧州を中心に広がる「サーキュラーエコノミー(CE)」の議論では、日本の取り組みが必ずしも高く評価されていない現実もあります。それはなぜなのでしょうか。

「処理の効率化」と「循環設計」の違い

一つの背景には、評価軸の違いがあります。

日本は長年、「いかに適正に処理するか」「いかに効率的に再資源化するか」という観点で進化してきました。いわば静脈産業の高度化です。

一方で欧州のサーキュラーエコノミーは、「そもそも廃棄物を出さない設計」「製品寿命を延ばすビジネスモデル」「再生材を前提とした素材選択」といった、設計段階やビジネスモデル段階からの変革を重視しています。

つまり、
日本は“出口の最適化”を磨いてきたのに対し、
欧州は“入口からの再設計”に軸足を置いているのです。

この視点の違いが、国際的な議論における立ち位置の差につながっていると考えられます。

欧州で進む設計主導の循環政策

欧州では現在、エコデザイン規則(ESPR)やデジタル・プロダクト・パスポート(DPP)の導入が進められています。製品は設計段階から修理可能性、分解容易性、再生材含有率などが求められるようになります。

さらに、バッテリー規則では再生材の使用義務が具体的に数値で示されています。これは単に「回収しておけばよい」という発想ではなく、「再生材を安定的に供給できる体制」をサプライチェーン全体で構築することを意味します。

ここでは、リサイクル事業者も製造業のパートナーとして、より上流の議論に関与することが求められています。

日本のリサイクル産業にとっての意味

日本のリサイクル産業は、高度な選別技術や安定した処理能力という強みを持っています。これは間違いなく国際的にも競争力のある分野です。

しかし、今後のサーキュラー経済の流れを考えると、「回収量」や「処理能力」だけでは十分ではなくなる可能性があります。

例えば、

  • 再生材の品質をどこまで安定させられるか
  • CO₂削減効果を定量的に示せるか
  • 製品設計段階の議論に参画できるか

といった点が、企業価値に直結していくと考えられます。

リサイクル事業者が単なる処理業ではなく、「素材供給者」としての役割を担えるかどうかが、今後の分岐点になるのではないでしょうか。

競争の舞台は国内だけではない

もう一つ重要なのは、競争環境が国内にとどまらない点です。

日本企業が欧州市場で製品を販売する場合、再生材の含有率やトレーサビリティへの対応が求められます。その際、国内のリサイクル事業者がどこまで国際的な基準に対応できるかは、製造業全体の競争力にも影響します。

つまり、サーキュラーエコノミーは「環境政策」の話にとどまらず、産業競争力の問題でもあります。

日本のリサイクル産業が持つ技術力は確かに強みです。しかし、その強みをどのように国際的な枠組みの中で位置づけ、拡張していくかが、これからの課題と言えるでしょう。

次の進化に向けて

これまで日本は、廃棄物処理とリサイクルの分野で着実に実績を積み上げてきました。その基盤があるからこそ、次の段階への移行も十分可能だと考えます。

鍵となるのは、
「処理の高度化」から「循環の設計への関与」へ視野を広げることです。

サーキュラーエコノミーは、従来の延長線上にある取り組みでもありますが、同時にビジネスモデルの再構築を求める動きでもあります。

今後の連載では、欧州規制の具体的な内容や、循環ビジネスの変化、そしてリサイクル産業にとっての機会とリスクについて整理していきたいと思います。

YEJapanでは、こうした国際動向を踏まえながら、日本のリサイクル産業がどのように進化できるのかを、実務の視点から考えていきます。

著書プロフィール

山本 英治(YEJapan, CEO/ Circular E, Founder)
製造業に深い造詣を持ち、現在は欧州・日本の製造業や自治体におけるサーキュラーエコノミー戦略を実行するビジネスモデルデザイナー。
オランダと東京を拠点にESPR、DPP、ISO 59000シリーズなど欧州の規制適用や9R施策導入など仕組み化や実装支援を行う。

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