【オランダ発】スタートアップ―“捨てない設計”を実装するテキスタイル革命 ― オランダ「ByBorre」の挑戦
― ByBorreが描くサーキュラー・テキスタイルの未来 ―
先日、アムステルダムで開かれたサーキュラーエコノミー関連イベントで、
オランダのテキスタイルスタートアップ ByBorre(バイボレ) の CEO、
Mijke van Ballegooijen(マイケ・ファン・バレフーヘン)氏と直接お話する機会がありました。
彼女が語ったのは、単なる“持続可能な素材開発”ではなく、
「トレーサビリティ(追跡可能性)を創造の一部にする」という思想でした。
■ トレーサビリティは“報告”ではなく“目的”
多くの企業では、トレーサビリティは法令遵守や報告のための「義務」として扱われています。
しかし ByBorre にとってそれは、「どこから来て、どう使われ、どう再び循環するか」を
設計段階から“見える化する”ための創造的プロセスです。
同社が開発した「ByBorre Create™」プラットフォームでは、
デザイナーやブランドが生地を設計する際に、
糸の原料・染色・製織・加工までの情報を一貫してデジタル上で管理できます。
このシステムは単なる追跡ではなく、
素材の選択が環境に与える影響をリアルタイムで“見ながら設計”できるのです。
彼女が語った一言が印象に残っています。
「トレーサビリティは compliance(遵守)のためではなく、creation(創造)のためにある。」
この発想の転換こそ、循環型テキスタイルの核心だと感じました。

出典:ByBorre公式ウェブサイト(https://www.byborre.com) / © ByBorre. Used for informational purposes only.
■ 「捨てない設計」を実装する仕組み
ByBorre は、糸から最終生地までの全工程を自社で可視化する独自のテキスタイルプラットフォームを構築しています。
それにより、企業やブランドが生地の段階から“循環可能な設計”を実践できるようになりました。
素材構成を最初に定義し、再生繊維・天然繊維の配合比率やリサイクル可否をシミュレーション。
さらに、生地1mあたりのCO₂排出量や水使用量なども可視化されるため、
「環境影響をデザインの一部として扱う」という新しいものづくりの文化を育てています。
■ 日本の製造業へのインサイト
日本の製造業でも、品質管理やトレーサビリティの技術は極めて精緻です。
しかしその多くは「生産後の追跡」に留まっています。
ByBorre のアプローチはまさに逆。
“生産前”、すなわち素材設計段階で責任を織り込む。
これは、あなたの関心である「捨てない設計=ポスト廃棄のデザイン戦略」にも直結します。
日本の製造業が持つ品質文化と、ByBorre の透明性設計が交われば、
「完璧な品質=完全な責任の見える化」という新しい価値基準が生まれるはずです。
■ オランダが示す「素材から始まる循環」
オランダでは、サーキュラーエコノミーを“素材起点”で捉える動きが広がっています。
エネルギー転換や再資源化だけでなく、
「そもそも廃棄物を生まない設計思想」が、デザインや製造プロセスの出発点になっています。
ByBorre の事例は、その代表格。
テキスタイルという日常に最も身近な素材分野で、
循環経済の哲学を“触れるもの”として実装しています。
■ 結びに:透明性から創造へ
「サステナビリティを報告書ではなく、製品そのものに織り込む。」
これは、循環型社会の本質を突く言葉です。
トレーサビリティを“説明責任”から“創造責任”へ。
ByBorre の取り組みは、
これからの日本の製造・デザイン業界にとっても、
「どう作り、どう循環させるか」を再考するきっかけになるでしょう。
🔗 出典・参考
- ByBorre公式サイト:https://www.byborre.com
- ByBorre Create™ platform
- EU Textile Strategy & Circular Design Framework
著書プロフィール
山本 英治(YEJapan, CEO/ Circular E, Founder)
製造業に深い造詣を持ち、現在は欧州・日本の製造業や自治体におけるサーキュラーエコノミー戦略を実行するビジネスモデルデザイナー。
オランダと東京を拠点にESPR、DPP、ISO 59000シリーズなど欧州の規制適用や9R施策導入など仕組み化や実装支援を行う。


